フェムテックは人口の半分である女性を対象としたもので、これまでタブー視されてきたものを顕在化させ解決する新領域として、注目されています。そして最近は、男性の健康に関するタブーを解決する「メンテック」分野も活発になってきました。
男性にとって複雑で繊細な分野をあつかう
メンテックは、生物学的男性の健康課題をテクノロジーの力で解決するヘルスケアのジャンルです。メンテックに分類されるサービスや製品は、フェムテック同様にリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性や生殖に関して身体的・精神的に健康でいられる権利のこと)に関わる以下のような領域を扱っています。
- 男性不妊
- ED
- 男性の避妊
- 男性のセクシャルウェルネス
- ホルモンバランスによる薄毛
世界の不妊治療の市場規模は2026年までに22億米ドル(約2,500億)と予測されています。最近では、ビル・ゲイツ氏がビル&メリンダ・ゲイツ財団を通じてスコットランドのダンディー大学の開発する男性用避妊薬に170万ドルの研究費を資金提供したことから、メンテック領域のイノベーションへの期待が高まっています。
女性は10代から婦人科に通うことが推奨されていますが、男性の不妊については調べるきっかけや知る機会がまだまだ少ない状況です。
これまでタブーとされてきたことについて男性が積極的に向き合い「男性特有のカラダの悩み」に対してサポートするプロダクトも登場しています。
EDや育毛のオンライン処方Hims
男性のセクシャルウェルネスのさまざまな領域(ED、育毛、スキンケア、メンタルヘルスケア)をあつかうHimsは、創業から5年目で上場しました。Himsの調査によると男性の9割が「自分の悩みについて医師に相談したことがない」ことが明らかになっています。そこで、サブスクリプション型でオンライン診察が受けられる仕組みをつくりました。
精子の凍結保存と在宅検査キットのLegacy
LegacyはCEOのKteily氏が経営コンサルタント時代、運転中に、熱湯を膝にこぼしたことの生殖能力への影響を不安に思い、精子バンクで分析を依頼したことが起業のきっかけになりました。
検査の結果、生殖能力は正常であることが分かりましたが、検査時の素っ気ない対応や高額な凍結保存料(年間500ドル)に疑問を抱き、廉価な在宅検査キットと凍結保存プラン(年間100〜150ドル)を提供するLegacyを立ち上げました。
現在、欧米を中心に、女性の従業員のために福利厚生として卵子凍結を補助する企業が増えていますが、Legacyは男性の精子凍結を補助する企業も増加していくだろうと述べています。
早漏を克服するMYHIXEL
MYHIXEL社は、早漏に悩む男性に対して、射精のコントロールをサポートするMYHIXEL MEDと、EDで悩む男性のためのMYHIXEL TRを開発しています。
超音波で避妊できるcoso
多様な避妊法がある女性に比べて、選択肢の少ない男性の新たな避妊法のひとつとして開発されているcoso。
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男性妊活の第一歩をサポートするSeem
精子セルフチェックキット「Seem」は自宅で手軽に精子の濃度と運動率を測定できる日本発のメンテックとして有名です。
不妊の原因の約半分は男性にもあることをデータで示したり、「ふたりの妊活応援プロジェクト」の発足など、女性のほうが頑張りがちな妊活に対してパートナーと取り組む重要性も伝えています。
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フェムテックが女性のリプロダクティブ・ヘルス/ライツに関わる課題をあつかうように、メンテックもこれまで語られてこなかった男性のリプロダクティブ・ヘルス/ライツ課題をあつかいます。
歴史を振り返ると、フェムテックはフェミニズムと切り離せないものです。メンテックでも、男性が社会から押し付けられるステレオタイプに問題提起するマスキュリズム(男性学)の考えのもと作られたものが多くあります。
女性よりも優遇されてきた歴史
フェムテックスタートアップの起業家の多くを占めるのが女性です。女性の身体の課題を扱うことから、男性が多くを占める投資家たちからの理解を得られず、投資を受けにくい現状があります。
一方で、男性のセクシャルウェルネスを扱うHimsやRomanといった企業はともに多額の資金調達を得ており、Himsは創業から5年で上場をしています。
日本ではバイアグラは半年で認可されたものの、低用量ピルは34年かかった過去があります。
1999年、ニューヨークタイムズ紙は低用量ピルが認可されていない先進国であるはずの日本で、著しく女性の少ない厚生省が、勃起不全(ED)治療を異例の速さで承認したことを報じました。
現在、緊急避妊薬(アフターピル)は海外90カ国以上で薬局で購入可能であるにもかかわらず、日本が遅れをとっていることが問題視されています。
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男性の性や不妊にまつわるスティグマ(不名誉な烙印)はなくなるべきですが、不均衡のない状態でフェムテック・メンテックが盛り上がってほしいものです。
フェムテック・メンテックともにリプロダクティブ・ヘルス/ライツに関連するビジネスは、経済格差や倫理の課題と常に隣り合わせなので、真摯な姿勢で取り組んでいるかどうかが重要です。
批判的な意見を誤魔化さず、社会との「緊張関係」をおそれず、課題解決を目指す企業が支持され残っていくことになるでしょう。
フェムテックとは?
Female(女性)× Technology(テクノロジー)をかけ合わせた造語で、生物学的女性の健康課題をテクノロジーで解決するヘルスケアのジャンルです。
「生理」「更年期」「婦人科系疾患」「不妊・妊よう性」「出産・育児」「セクシャルウェルネス」などのカテゴリがあり、それぞれの問題をタブー視せず、前向きに解決するためのサービスやアイテムが数多くあります。フェムテックの市場規模は、2025年には5兆円規模に成長するといわれています。
ランドリーボックスでは、定期的なアンケートを実施しています。
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