「肌に優しい」「スリム」「消臭」などさまざまなニーズに応える生理用品があるなか、とにかく「モレにくい」に特化したナプキンが大王製紙の「エリス クリニクス」だ。

エリス クリニクスは経血量の多い過多月経の人向けに開発されたナプキンで、「夜用ナプキン5枚分の吸収力」(*1)を謳っている。

*1 「エリス 新・素肌感(多い日の夜用)29cm」との比較(2020年7月時点)

過多月経とは、日常生活に支障が出るくらい経血量が非常に多い状態を指す。過多月経の人が持つ「あふれモレ」や、「短時間でナプキンを交換しなければならない」といった悩みに対応できる商品として2005年に誕生し、これまで改良を重ねてきた。

商品化に向けて、当時エリス クリニクスの商品企画・開発を担当した大王製紙株式会社の藤井孝子さんと、マーケティング担当の八上重貴さんに話を聞いた。

アンケートハガキで寄せられた「モレ」に対するお悩みの声

2000年代初頭、生理用品メーカー各社からモレ防止機能を高めた夜用ナプキンが次々と発売された。大王製紙は当時、ユーザーの生理の悩みを知るために生理用品のパッケージにアンケートハガキをつけていたそうだ。

Photo by LaundryBox

「当時、各社がモレにくい夜用の長いナプキンを発売していました。量の多い日でも安心して使える生理用品で、多くの人が救われたと思うのですが、アンケートには“それでもまだモレる”という回答がいくつも見受けられました。吸収量の多いナプキンがあっても、モレに関する悩みの声は尽きない。なんとか解消できないか、と考えました」

当時は子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患について、どのような症状で、どのくらいの経血量があるのか、現在のようにあまりくわしく把握していなかったという。「経血量がとくに多いお客様がどのように生理期間を過ごしているのか、どんなことに困っているのか、くわしく調べる必要がある」——生理用品の開発部隊は調査計画を立てた。

Web調査も行ったが、アンケートハガキを送ってくれた方の中から、とくに「モレ」に関する悩みを持つ方の自宅を訪問し、くわしく話を聞くことになった。

想像の域を超える経血量の多さに衝撃

自宅訪問で話を聞いてみると、想定外に悩みが深いことがわかったという。とくに経血量の悩みは深刻だった。

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「多い日用のタンポンとナプキンを併用していても1時間もたずにあふれモレてしまう」

「トイレに座ると、拭いても拭いても経血が出続けているため立ち上がれない」

「ナプキンを何枚重ねてもモレるので外出できない」

「生理は人と比較しづらいので、どうしても自分基準で考えてしまっていました。いくら多い人でも、大体このくらいかな?と想定していた値を大きく上回っていました」と藤井さんは言う。

調査ではユーザーに使用後のナプキンの重さと使用前の重さの差を計測してもらい、どのくらいの時間に何mlの経血が出ているのかを調べたという。その結果わかったのは、想定を大きく上回る経血量だった。「衝撃だった」と藤井さんは当時を振り返る。

「本当に驚きました。これまで“多い日”の基準としていた数値よりも10倍以上の結果が出たんです。これでは従来の“多い日用”では確かにモレてしまうだろうと、社内でも開発目標をあらためて取り組むことになりました」

絶対に失敗しないナプキンを目指す 使命感に燃えた

人には話しづらい生理の悩みをくわしく伺うことになるため、ユーザー調査はモニターとの関係性の構築が不可欠だが、多くの人が調査に協力してくれたという。

「『商品を改善してほしい』という要望よりも、どこか諦めている方がほとんどでした。大きなナプキンを使ってもモレていたため、『生理用品には期待できず自分でなんとかするしかない』といった声もありました。普段感じていることを正直に話してくださり、リアルな声を聞けたことが商品作りに生かされたと思います」

悲惨な現状を知ったことで「絶対に失敗しないナプキンを目指そう」「我々がやらなければ」と使命感に燃え、チーム一丸となり開発に乗り出した。

モレの原因は大きく2種類

調査を続けていくと、モレの種類は大きく2種類あるとわかった。ひとつは「ナプキンのキャパオーバーによるモレ」、もうひとつが「吸い込むスピードが追いつかず横からモレる」の2種類。

一般的に多い日用や夜用は、ナプキンの面積が大きく作られている。吸収体に完全に吸収された上で、キャパオーバーになり溢れてしまい、前モレや後ろモレをするのが前者。経血が大量にドバッと出続けることで、吸収体に染み込むスピードが間に合わずに横からモレてしまうのが後者だ。

大王製紙は後者の「吸い込むスピード」に着目した。

サイドに完全防水ギャザーを入れることで吸収体の端まで経血が行き渡っても、横にシミ出ない設計にした。また表面はメッシュタイプ(*2)の素材を使用し、量の多さをしっかり下層の吸収体に届け、下からの逆戻りを防ぐというものだ。

エリス「新・素肌感29cm」(左)と「エリス クリニクス」の断面比較。Photo by Laundry Box

肌触りにもこだわっている。「経血量が多くてもベタベタした不快感を感じにくいように、逆戻りしにくく、目の細かいシルクのような滑らかな肌触りを目指して開発したシート(*2)を使用しています」(藤井さん)。

*2 初代クリニクス開発当初。現在はさらに改良されています。

「今までと全く違うナプキン」ユーザーから歓喜の声

企画から約2年を経て販売に至ったエリス クリニクス。ユーザーだけではなく医療関係者にもヒアリングし何度も改良を重ね、試作品は50パターンを超えた。同社の他商品に比べても試作や検証に長い開発期間がかかっているという。

試作品テスト中のエリス クリニクス(当時の写真)。写真提供=大王製紙株式会社

また使用する資材や製造レーンにもコストがかなりかかっている商品だ。社内からの反発はなかったのだろうか?

「クリニクスに対して反対意見はなかったです。コストはなるべく抑えたほうがいいとは思いますが、それよりも困っている方にきちんと届けなければという使命感のほうが強かった。ニーズに応えれば必ず使ってもらえるという自信もありました」

マーケティング担当の八上さんによると、「生活者のニーズは変化しています。ナプキンメーカーだからこそできることがあると思っているので、生活者の悩みに寄り添い、細かいニーズにも応えられる商品展開で勝負していく」と話す。

悩みを話してくれたモニターに、完成したクリニクスを使ってもらったところ、驚きと歓喜の声が寄せられた。

「今までのナプキンとまったく違う」
「生理期間をモレなく過ごせたのは初めて」
「モレが不安で夜中に必ず目覚めていたのに、初めて熟睡できた」
「タンポンが苦手なので、使わずに済むのが嬉しい」
「生活が変わった」

店舗の理解が得られにくい。唯一リピート率の高さが強み

特殊な商品ゆえ、パッケージデザインも熟考を重ねた。

発売当初のパッケージデザイン。写真提供=大王製紙株式会社

「他の製品と差別化するために、当時は紙箱のパッケージで少しでも店頭で見つけてもらえる工夫をしました」。夜用ナプキンのパッケージは紺色に月や星などのモチーフが使われることが主流だったが、エリス クリニクスは「医療」をイメージできる十字のモチーフを採用。経血量に困っている人が、どんな場所で情報を得ているのか考慮して、クリニックでのサンプリングも行ったそうだ。

(サンプリングをご希望される医療機関の方は、現在こちらのフォームより受け付けています)

発売当初は販売店からの理解が得られにくかった。取扱い店舗を増やすことに苦労し、なかなか実績が出ないことが大きな悩みだったと、藤井さんは当時を振り返ります。

「認知度も上がらず販売実績も低いままでしたが、クリニクスはリピート率の高さが強みでした。お客様が販売店の方に『クリニクスをなくさないでください』と伝えてくださるなど、繰り返し購入を求めるお客様が多い商品です。売り上げ数は少なくても、そのニーズに応えようとされている販売店も意外と多いのです。販売店やリピーターの皆さまに支えられています」

まだ完成ではない。進化を続けるエリス クリニクス

Photo by Laundry Box

藤井さんに開発でもっとも苦労した点をたずねると、やはり「繰り返し多くの経血を受け止めるナプキンの構造」だと教えてくれた。

「細かい構造の条件を変えながら、地道なトライアンドエラーを何度も繰り返しました。その結果、粘度の高い経血でも繰り返しスピード吸収する現在のクリニクスに仕上がりました」

それでも藤井さんは「まだまだ改良の余地は残っている」と語る。経血量に特化した商品ゆえ、どうしてもかさばる。装着時の快適性もより追求したい考えだ。2021年2月には「肌へのやさしさ」を重視してリニューアルしたクリニクス。直接肌に触れる「シート部分」を従来の「メッシュシート」から、ふんわりとした肌ざわりを重視する「ソフトタッチシート」に改良した。

発売から16年。今なお進化を続けるクリニクスは、今日も経血量に悩む多くの女性たちの1週間を支えている。

ランドリーボックスでは、過多月経の方のための生理ナプキン「エリス クリニクス」とともに「#お願いクリニクス #生理のサイン見過ごさないで」プロジェクトを実施しています。過多月経に悩む方々の選択肢となるアイテムをご紹介するほか、婦人科受診の啓蒙を行っています。

抽選で50名の方にエリス クリニクスをプレゼントします。また医療機関関係者の方にサンプルを提供する取り組みも実施中です。くわしくはこちらをご覧ください。

エリス クリニクスの商品情報はこちら


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