6年9カ月……さて、これは何の数字でしょう?
実は、私たちが一生のうちで生理に費やす時間の平均なのだそう。約7年といえば、生まれた赤ちゃんが小学生になってしまうほどの時間!
こんなに長く付き合うのに、そして、人生にも関わる大切なことなのに、「生理」については、なぜか話しづらいと感じる人も多いのではないでしょうか。
先日、「生理」をテーマにした番組が放送され、純粋に生理だけを特集した内容が史上初、前代未聞と話題になっていましたのでご紹介します。
「生理CAMP2020」とは
「生理CAMP2020」は2020年8月31日(月)に、テレビ東京で放送された「生理」をテーマにしたバラエティー番組。
個人差こそあれど、女性にとって生理は毎月ストレスがかかってしまうものだからこそ、さまざまな選択肢を知って少しでも快適な生理ライフを送ろうというコンセプトで地上波初の生理だけを取り扱った番組が企画・放送されました。
生理について語るYouTubeが話題になったバービーさんが司会を担当し、ゆきぽよさん、森三中の黒沢かずこさん、りゅうちぇるさん、そして、産婦人科医の稲葉可奈子先生が出演。
バービーさんと黒沢さんは、初潮のときにお母さんに言えなかったというエピソードをお話ししていました。また、生理痛で痛み止めの薬を飲んでいいのか、みんなが使っている生理用品や世界の生理用品など、丸ごと生理について語り合い、老若男女問わず楽しく生理を語れる内容が画期的でした。
最新の生理用品、生理パンツや月経カップ、シンクロフィットや月経ディスクなどの紹介もありましたよ。
Twitterでの反響
深夜帯であったにもかかわらず、地上波で「生理」がテーマの番組が放送されたということもあり、Twitterでも多くの反響がありました。一部ご紹介します!
“こういう番組増えてほしい。男性にもっと生理を理解してほしいし、逆にみんなの生理事情も知りたい。なんで生理が恥ずかしいって、隠さなきゃいけないって思わなきゃいけないの!”
“女性でもあまり話さない内容だから新しい発見があっておもしろかった〜月経ディスクにびっくり 男女関係なくフラットに話せるようになるといいなあ…とても良い番組だったのでぜひシリーズ化してほしい”
“録画した生理キャンプ夫、娘小4、息子年長と4人でみた
タンポン派は少ないね
月経カップを使ってるから2%に入るわ(私)
あの洗面台でたまに見かけるやつね(夫)
タンポンてこんななんだねー!(娘)
なんて会話しながら。
女性でも知らないことがたくさんあるからオープンに話ができるといいな”
担当プロデューサー工藤里紗さんに聞いてみました
なぜ、地上波で生理だけを取り扱う番組「生理CAMP2020」を放送しようと思ったのか。テレビ東京プロデューサー工藤里紗さんにお話を聞きました。
「生理CAMP2020」プロデューサー
工藤里紗
テレビ東京プロデューサー。慶應義塾大学環境情報学部卒。2003年にテレビ東京に入社後、バラエティ、音楽、ドラマと幅広いジャンルを手がける。『極嬢ヂカラ』『アラサーちゃん 無修正』、6月に行われたテレ東無観客フェスで『新・大人の性教育 セクシャルマインドセットをバージョンアップせよ!』を担当するなど、女性ならではの悩みと向き合ってきた。
——なぜ「生理」というテーマで番組を企画したのですか。
人生ずっと生理に振り回され、悩んできました。きっとこれは自分だけではないはず。でも大っぴらに社員食堂で話す話題でもない…そんな中、もし番組の1コーナーとしてではなく「生理そのものをメインテーマ」に番組ができたら何か変わるかな、と思っていたからです。
ここ数年のフェムテックブームや、性教育を見直す流れ、疑問に感じていたけど「ガマンしてきたこと」を問う潮流や生理をテーマにした映画『パッドマン』などを観て、今だ!と。
——今までこのテーマでの番組があまりなかった理由をどうお考えですか?
ある会議で生理の番組や新規ビジネスをしたいと提案したら「誰も生理をテレビで見たくないと思うよ。ダイエットや化粧に関する悩みのほうがいいのでは?」と言われました。10年以上前『極嬢ヂカラ』という番組で生理を扱ったときも視聴者からは好評だったのに、社内で「テレビで生理をやるなんてありえない。がっかりだ」と言われたことも。
この反応こそが、なぜ生理を扱った番組があまりないかを物語っていますよね。ある程度、経験を積んでいるテレビマンなら、心の中で視聴者のニーズがあると分かりつつも正面からは取り組みづらいのだと思います。でも、それでは何も変わらないし、長年かかってもこうして実現できることもあるので、何度でも谷越えのジャンプを試みる価値はあると学びました。
——企画から放送までの間で苦労したことや難しいと感じた点はありますか?
社内外さまざまな意見があったこと、また「生理」が感情が織り交ざった話になりやすかった点が難しいと感じました。幸い、番組スタッフ間の意思統一、大切にしたいこと(例えば、オープンにするしないは自由、100通りの生理があること)は共有できていたので、いただいたご意見は参考にしつつスルーするもの、受け入れるものなどを取捨選択しました。
また、プライベートな話なので悩みに寄り添いながら取材を行いました。スタジオでも撮影したいのに、コロナで「距離」を取らざるを得なかったところも苦労しました。それでも、生の声も集めたくリモートでインタビュー取材をしたり、スタジオは“いつも話さないことを話しそうな”キャンプという設定にしたり工夫しました。
出演者のみなさまとも収録前にしっかり対話して、番組が大切にしたいことをお伝えして挑みました。男性が生理について聞きづらいのと同様に、女性の中でも「生理感度が千差万別」のため、どこに軸を置くかも悩みました。
日頃からSNSや海外情報をリサーチする「生理感度が高い」人に向けた方が衝撃は強いと思うのですが、それではテレビでやる意義が活かせないと考えました。生理という広いようで実は狭い話を扱うための間口を広げるよう工夫したのも苦労した点です。
——初の試みということで、気をつけた点などあれば教えてください。
生理の大変さは描きたい。男性ゲストも入れたい。でも、男性に「女は大変なのよ!分かってないね!」と伝える対立構造にはしたくないという思いが強くありました。実際に「男女トークバトルにした方がテレビ的だよ」とのアドバイスももらいましたが、バトりたいわけではない。女性の中でも「100人いたら100通りの生理」があるのに、性別でバトる意味が分からないなと。
だからテレビ的にあおらずに、苦労も伝えつつ、ひとつの番組としても楽しく観ることができる生理を描くことを意識しました。
——賛否両論含めて反響はありましたか?想定外だったことや、放送を経て気づいた点などもあれば教えてください。
放送前に、番組の公式Twitterを立ち上げたのですが、中の人+スタッフ+数名の知り合いだけの反応で終わるかなと思っていました。普段大っぴらに話さない内容なのでSNSとの相性は良いとは思っていましたが、それはレギュラーで継続していった場合の話。宣伝費もないお手製のど深夜の30分番組でしたし…。
しかし、嬉しいことにとても話題になったようで、知り合いから「トレンド入りしているよ!」と教えてもらい関心値の高さに驚きました。
賛否の「否」ももちろんあり、「気分が悪くなった!」との連絡をくださった方もいます。極力ポップに描いたつもりなのですが、もっともっと思考せねばと思いました。なぜかというと、「生理感度の高い人」だけではなく、関心がない、知りたいけど知る由がない人にこそ伝えたい事があるからです。
でも幸いなことに、それを大きく上回るポジティブな反応、さらに「もっと知りたい」という貪欲な反応があり勇気づけられました。PMSについて知りたい、更年期について知りたい、産後の生理について知りたい、子どもに教えられる教材として知りたい、男にも分かるように教えてくれ!など。「もうお腹いっぱい!これ以上知りたいことはない」よりも、「もっと知りたい!」という意見があるものの方が幅がある。第2弾、第3弾と伝えられるチャンスが増えるかもしれないと思うと楽しみです。
——第2弾の放送予定や次回掘り下げたいテーマなど、今後の展望を教えてください。
放送前から「観たいけどテレビ東京が観れない!」という声がたくさんあり、各所の権利処理などを経て期間限定でYouTubeで配信することになりました。課金のプラットフォームでもなく、出演者がいる中、本編丸ごと公開するというのはなかなか難しいのですがポジティブな感想や「観たいのに観れない」といった声が後押しになりました。
第2弾を制作することになったら、できればみなさまから「知りたい!」との意見が多かったトピックを扱いたいです。とくに知っているようで知らない体の仕組みのこと、PMSなど生理にまつわる不調について。
継続して考えていくことが大事なので、地上波放送だけにこだわらず、配信、イベント、企業研修、書籍、せっかくなのでみんなで考えるコミュニティを作ったり…と色々な展開をしてみたいです。どなたかお力を貸してください(笑)。
あと、私には息子がいるので男性バージョンのカラダと心の変化や悩みについても知りたいです。今後の展開を検討したいので、声援やご意見をいただけると嬉しいです。この記事を読んだみなさまと一緒にいい番組を作っていけたら幸いです。
<ランドリーボックス では、テレビ番組で取り上げてもらいたい生理やカラダの話についてのアンケートを実施しています。記事下のアンケートからご協力いただけたら幸いです>
みんなが同じ症状ではないし、環境も、使う生理用品も違う。そのため、女性同士でも完全に理解できるわけではないのが生理。でも、知識や可能性を広げ、自分はもちろん、家族や友人、パートナーなど、周囲と一緒に話し考えることで、快適に過ごすヒントが得られるかも。 そんな希望が持てる番組だったように思います。
地上波で初めて放送された「生理」をテーマにした番組は、出演者のみなさんの率直な想いや経験なども聞くことができ、本当にあっという間でした。ぜひ続編を期待したいところです。
今回の放送を見逃した方は、YouTubeのテレビ東京公式チャンネル TV TOKYOで「生理CAMP2020」の番組を観ることができます。
公式サイト:
バービー、森三中・黒沢かずこ、ゆきぽよ、りゅうちぇるが生理についてさわやかにぶっちゃける!世界中の生理グッズも大集結!/生理CAMP2020
取材協力/画像提供:テレビ東京