助産師の力で“いのち”に関わる社会問題を解決する株式会社With Midwifeは日本の性教育をアップデートするためにボードゲーム「Genie」の制作に着手したと発表した。2021年6月11日からクラウドファンディング『各業界のプロが集結!ボードゲーム「ジニー」で性教育の概念を変える』もあわせて開始された。
ボードゲーム「Genie」とは
ボードゲーム「Genie」の舞台は魔法の世界。仲間と協力して一人前の魔法使いを目指すストーリーだ。ゲームの設定、道具やイベントを通じて性教育で身に着けたい知識を擬似体験できるものの、性教育色は出していない。1回30分程度でプレイ可能で、対象年齢は8歳からを想定している。
一見「ただただ楽しい」ボードゲームだが、その中でメタファー的に性教育のエッセンスを込めていくことにこだわっているという。例えば、このゲームは協力型だが、その「協力」も相互の同意が得られなければ成立しない。これには性的同意の比喩も含まれ、何事においても自分にイエスかノーかを決める権利があることを共通認識にしているそうだ。
恥じらいを感じさせないため、固定概念を取り除きまずはとにかく遊んでもらう。そして、保護者やプレイヤー本人が必要だと感じる時期に、必要なレベルに応じた<賢者の書物=ゲームのコンテンツに込められた性の知識の解説書>が手元に届くというシステム。年齢に合わせた3種類を準備し、難易度の異なる3つが必要なタイミングで手に入る仕掛けを検討しているという。
また、「Genie」という名前は、アラブ世界の伝承での魔法の精霊や守護神を表す「ランプの魔神ジーニー」に由来しているそうだ。3つの願いを叶えてくれることで有名なジーニーだが、蘇りの魔法や恋愛成就の魔法など叶えられない5つの魔法があるという。
子どもたちを守る守護神になりたいけれど、「傷ついたあなたに変わること」「時を戻すこと」「体を若いまま止めること」「失った命を戻すこと」「ずっと手の中で守っていくこと」の5つはできなくても、正しい「知識」や、避妊具やワクチンなどの「あなたを守るアイテム」、そして「愛」なら与えることができるといった想いを代弁するネーミングだ。
教育現場では性教育のアップデートが困難な現状
株式会社WithMidwifeのプレスリリースによると、ボードゲーム制作に至った背景は以下の2つだという。
世界に遅れをとる日本の性教育
2009年に「性の権利」としての「包括的性教育」を具体化するため開発された『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』は国際的な性教育の指針となっており、質の高い包括的なセクシュアリティ教育が提唱されていると共に、 健康と福祉の促進、人権とジェンダー平等の尊重などが示されており、性教育の根本に人権教育があるという概念は、世界の共通認識になりつつある。
2020年6月11日には、日本でも文部科学省と内閣府による「生命(いのち)の安全教育」が公開された。学校教育で「性犯罪にあわないための知識を伝えること」の根幹には、子どもたちの尊厳を守り、個々を大切にすることの理解が含まれる。一方で日本の性教育においては、性的同意年齢の低さや教育現場での「はどめ規定」などさまざまな課題があることをあげている。
教育現場では性教育のアップデートが難しい
教育現場においてのヒアリングでは、「生命(いのち)の安全教育」のように国が打ち出した新しい方針をカリキュラムに落とし込み、現場で実施可能にするまでの労力が大きいことがわかったという。また、人材教育や教材の準備にも多くの時間を要することもわかった。
株式会社WithMidwifeは教育現場だけで性教育の新たな方針を支えられないのであれば、家庭や社会も協力が必要であると考えている。今回、専門職者である助産師、産婦人科医、ボードゲームクリエイター、デザイナーなどが集結し活用可能な性教育ツールを制作したという。
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クラウドファンディングの支援受付終了日は7月30日(金)。最終的には、全国の児童施設や希望する教育機関へもボードゲームをプレゼントできるよう、3段階にステップを分けて支援を募っていくとしている。
ボードゲーム「Genie(ジニー)」のクラウドファンディングの詳細はこちら。